脂肪注入による乳房再建
私たちは2012年より、ロジャー・クーリー先生、スティーブン・コーエン先生など、世界でも脂肪注入で名だたる先生方から学び、
「乳がんに対する乳房全摘後の乳房を脂肪注入のみで再建する」 ことに力を注いできました。
全摘後でも、小さな傷跡で、自分の脂肪のみで
乳房を再建することは可能です。
当クリニックでは、穿通枝皮弁、脂肪注入、インプラントなど、乳房再建の多くの選択肢が提供できる医師が、
全ての技術と経験を融合させて、
皆さま一人ひとりの状況やご希望に向き合い、
「左右対称で、きれいな、患者さんそれぞれに合うオーダーメイドの乳房」を再建します。
脂肪注入とは
脂肪注入は、血流のない脂肪の粒を移植して再建する方法です。
脂肪の粒一つ一つが周りから栄養を貰う必要があるため、1度の手術で、栄養を貰えないほど沢山の脂肪を注入することはできません。そのため複数回に分けて、少しずつ乳房を大きくしていく必要があります。
手術について
当クリニックでは、脂肪注入の手術は日帰り・全身麻酔で行っています。腹部や大腿、腰部などから脂肪吸引をして得られた脂肪を、遠心分離することで麻酔液や血液を除去して脂肪の粒のみにします。精製した脂肪の粒を、「カニューラ」と呼ばれる細く先端が丸い針を用いて、細かく丁寧に、大胸筋下・内、皮下脂肪の層に注入します。脂肪吸引のための傷は5mm程度、注入のための傷は針穴程度です。
当クリニックではこの手術を、6ヶ月以上間隔をあけて繰り返すプロトコールで行っています。
脂肪の生着率
残念ながら、注入した脂肪は全て生着するわけではありません。
生着率は、注入する脂肪の種類、移植床である乳がん術後の状態 (乳房皮膚がどのくらい切り取られているか、皮下脂肪がどのくらい残っているか、皮下に硬い瘢痕ができていないか、エキスパンダーの有無、放射線照射の有無など) によって大きく変わります。
体外式乳房拡張器
当クリニックでは、生着率を少しでも良くできるよう、体外式乳房拡張器(Noogleberry®︎)を術前後に使用しています。お椀のようなカップを乳房に当てて陰圧をかけることで、体積を少し膨張させ、血流を増強し、生着率の向上が期待できます。日本人は、欧米人と比較して脂肪が沢山はありません。
貴重な脂肪を少しでも有効に使うために、患者さんには術前後1ヶ月間使用して頂いています。
脂肪の種類
また、当クリニックでは、「純脂肪」、「コンデンスリッチファット(CRF)」、またそれぞれに培養脂肪幹細胞を付加した、「培養脂肪幹細胞付加 純脂肪」、「培養脂肪幹細胞付加 CRF」、の4種類の脂肪を用意しています。
CRFを用いたり、培養脂肪幹細胞を付加することで、生着率向上が期待でき、今まで純脂肪のみでは難しかった患者さんも脂肪注入の適応になるようになってきました。
合併症について
一般的な手術の合併症として、出血、血腫、疼痛、感染があります。
脂肪注入の特有な合併症としては、オイルシスト(脂肪が生着せずに油として残ったもの)、良性石灰化があります。
脂肪吸引の特有な合併症としては、吸引部の凹凸、痺れ、感覚の低下があります。多くの方は2、3ヶ月で落ち着きますが、凹凸が残ることもまれにあります。また吸引部は皮下出血班(紫色のひどい打ち身のような状態)となりますが、必ず落ち着きます。
また重篤な合併症として、脂肪注入による気胸、脂肪吸引による腹腔穿刺がありますが、私たちは過去一度も起こしたことはありません。
脂肪注入による乳房再建のオンラインセミナー
当クリニックでは、2ヶ月に1回ほど、20名様限定の無料オンラインセミナーを行っています。
質疑応答ありで、2時間程度のセミナーになります。
武藤院長、角田医師、佐武医師が担当致します。
<セミナーの内容>
1.脂肪注入とは 2.手術の実際(動画で紹介) 3.培養脂肪幹細胞付加脂肪・コンデンスリッチファット(CRF)について 4.症例のお写真 5.術前後の注意点・診療の案内 6.質疑応答
参加ご希望の方は、下記よりお申し込みください。
*少人数制ですので、「これから脂肪注入での乳房再建をお考えのご本人さま」に限らせて頂きます。
診療と手術の流れ
当クリニックの初診から手術、術後フォローの流れについて以下にお示しします。
「脂肪注入による乳房再建」についてよくあるご質問
全摘後でも脂肪注入のみでの再建は可能です。
しかし残念ながら、全ての患者さんが適応になるわけではありません。乳がん術後の状態、体型などを診察して、脂肪注入で再建ができるかをお話させて頂きますので、ご希望の方はまず診察をお受けください。
*脂肪注入での再建が難しい場合は、患者さんに合った他の再建法を提示させて頂きます。
エキスパンダー挿入後でも再建は可能です。
脂肪注入手術の際に、エキスパンダー内の生理食塩水を減らしながら、段階的に脂肪に置き換えていきます。最終的にエキスパンダーは抜去し、脂肪のみで再建された乳房となります。
部分切除後でも再建は可能です。
部分切除後の方は、放射線が照射されているため、乳がん術後の状態によっては、培養脂肪幹細胞を付加した脂肪注入をお勧めさせて頂く可能性があります。
インプラント再建後でも脂肪注入で再建は可能です。
乳がん術後の状態や、インプラントのサイズにより、初回の脂肪注入手術の際に、小さめのインプラントに入れ替えることがあります。最終的にインプラントは抜去し、脂肪のみで再建された乳房となります。
放射線照射後でも脂肪注入で再建は可能です。
培養脂肪幹細胞を付加した脂肪注入を用いることで、今まで純脂肪では難しかった放射線照射後の患者さんも脂肪注入の適応となってきました。
しかし、脂肪注入での再建が難しい場合もあります。乳がん術後の状態、体型などを診察して、脂肪注入で再建ができるかをお話させて頂きますので、ご希望の方はまず診察をお受けください。
また、皮膚・皮下脂肪が薄く人工物挿入が難しい場合でも、脂肪注入を行うことで、組織が回復し、その後にエキスパンダー挿入し、インプラントや自家組織再建が可能となることもあります。
脂肪注入の手術は、入院せず、日帰りで手術が可能です。
私たちはこれまで、日帰り・全身麻酔で多くの患者さんの治療を行ってきました。
遠方にお住まいの患者さんも治療可能です。
これまで遠方からも、多くの患者さんにお越し頂いています。翌日に術後診察がありますので、術後は近隣ホテルにお泊まり頂いております。
術後の痛みの感じ方は患者さんにより様々です。お仕事の内容にもよりますが、初回手術の際は、数日〜1週間程度お休みすることをお勧めしています。
術後は、注入した部位の安静や圧迫しないことが大切なため、注入した乳房側の肩関節の運動や、重いものを持つ行為、圧迫するような下着の装着などは1か月間程度制限して頂いています。吸引した部位は、出血や浮腫みの予防に1週間〜1ヶ月程度圧迫して頂いています。
症例写真は本ホームページには掲載できませんが、初診時に患者さんの状況に合った症例写真をお見せしています。
また、2ヶ月に1回ほど20名限定のオンラインセミナーを行っており、その際にも手術写真や症例写真をお見せしています。
現時点では保険適用外(自費診療)の治療になります。
今後の保険適用については、日本形成外科学会・日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会で活動はしておりますが、現時点ではまだわかりません。
当クリニックでの治療をご希望される方へ
乳がん術後の状態は、患者さんによって異なります。患者さんそれぞれの状況に合った方法を提示させて頂きますので、当クリニックで脂肪注入による乳房再建をご希望される方は、まず当クリニックの外来を受診して下さい。
初診の際は、1時間程度時間をかけて、ゆっくり丁寧に説明させていただきます。また、術後ケアも長期にわたり定期的に行わせていただきます。
なお、乳房再建を行うには、担当乳腺外科の先生との連携がとても大切です。外来受診の際は、乳腺外科の先生からの紹介状をお持ち下さい。*紹介状がなくても診察は可能ですが、手術が決まりましたら、手術前には必ず紹介状をお持ちいただくようお願い致します。
脂肪注入による乳房再建の他、乳頭乳輪再建、medical tattoo、乳房の美容外科も行っています。